
瀬尾まいこさんの『ありか』を読んで、ボクに残ったのは「家族なら分かり合える」という簡単な答えではありませんでした。温かな物語を想像していたけれど、親との関係や子どもへの思いは、優しさだけでは片づけられない。そこが、この作品のいちばん心に残ったところです。
美空と娘のひかり、そして離婚後も二人を気にかける義弟の颯斗。三人を中心に描かれる日々を通して、家族の形や、自分の居場所について考えさせられました。結末には触れず、ボクが感じた魅力と、読む前に知っておきたい点を紹介します。
この本が合いそうな人
- 家族との距離や親子関係について考える小説を読みたい
- 血縁だけでは説明できないつながりに関心がある
- 派手な事件より、登場人物の気持ちを追う物語が好き
『ありか』はどんな物語?
美空は、自分のことしか考えない母との関係に悩みながら、一人娘のひかりを育てるシングルマザーです。美空の義弟・颯斗は、兄と美空が離婚した後も、ひかりの成長を見たいと願い、二人の暮らしを気にかけます。
春から冬へと移る日々の中で、親から受けたものをどう受け止めるのか、子どもに何を渡したいのか、家族でなくなった後も続く関係をどう考えるのかが描かれていきます。
大きな謎を追うミステリーではありません。身近な人との関係が少しずつ変わっていく様子を読む、家族小説です。
ボクが心に残ったところ
親への感謝を「当たり前」にしない
親になれば、育ててもらった恩に気づいて自然と感謝できる。そんな決まりきった話にはなっていません。美空の母との関係には簡単に割り切れないものがあり、「親なんだから」「育ててもらったんだから」という言葉だけで気持ちを整理できないことを考えさせられます。
親を大切に思う気持ちと、距離を置きたい気持ちは、同時にあってもおかしくない。ボクはその揺れをきれいごとでまとめないところに、この物語の誠実さを感じました。
家族の形が変わっても、続いていくつながり
颯斗は美空の義弟ですが、離婚後もひかりを見守ろうとします。血縁や戸籍だけで「家族」を決めるのではなく、相手を気にかけ、関わり続けることにも意味がある。颯斗の存在を通じて、そんな見方が自然に浮かびました。
颯斗自身も、自分の恋愛や家族との関係を抱えています。誰かを支える側にも、その人自身の人生や悩みがある。その点まで含めて描かれているのが印象的でした。
「居場所」は、特別な場所でなくてもいい
この本を読んで考えたのは、居場所は最初から用意されているものとは限らない、ということです。気にかけてくれる人がいること、何気ないやりとりを重ねること。そうした日々の積み重ねが、誰かにとっての支えになるのかもしれません。
大げさな奇跡ではなく、暮らしの中にある小さな支えを描く。読み終えた後に残る温かさは、そこから来ているように思いました。
良かったところと、少し人を選びそうなところ
| 良かったところ | 人を選びそうなところ |
|---|---|
| 親子や家族の関係を一つの正解に押し込めない | 派手な事件や大きなどんでん返しはない |
| 血縁だけではない支え合いを描いている | 日常の描写が中心で、展開はゆっくりめ |
| 登場人物の悩みを、きれいごとだけで終わらせない | 親子関係や子育てのテーマが、読む人の経験によっては重く響く |
ボクは静かな語り口が作品に合っていると思いましたが、テンポの速い物語を読みたいときには、少し物足りなく感じるかもしれません。また、読み終えた瞬間に悩みへの答えが出る本でもありません。登場人物の選択を見ながら、自分の中で考えが続くタイプの作品です。
『ありか』をおすすめしたい人
- 親との関係を、感謝か拒絶かの二択で割り切れない人
- 家族の形や、離婚後に続くつながりを描く小説を読みたい人
- 誰かの居場所や支えになるものについて考えたい人
- 日常の中で少しずつ心が動く、落ち着いた小説が好きな人
おすすめしにくい人
- 事件や謎解きが次々に起こるミステリーを期待している人
- 短時間で読めるテンポの速い物語を探している人
- 今は親子や家族の問題を扱う作品から距離を置きたい人
作品の評価というより、読むタイミングとの相性です。気になるテーマがあるなら、あらすじや冒頭を確認してから手に取ると安心です。
本屋大賞の順位と書籍情報
『ありか』は2026年本屋大賞にノミネートされ、最終順位は7位でした。発売日は2025年4月18日、出版社は水鈴社、全368ページです。
| 書名 | ありか |
|---|---|
| 著者 | 瀬尾まいこ |
| 出版社 | 水鈴社 |
| 発売日 | 2025年4月18日 |
| ページ数 | 368ページ |
| 定価 | 1,980円(税込) |
| ISBN | 978-4-910576-03-9 |
まとめ:温かいだけでは終わらない家族の物語
『ありか』は、母と娘、親との距離、離婚後も続くつながりを描いた小説です。読んでいて温かさを感じる一方で、親子だからこその難しさや、感謝を求められる苦しさにも目を向けています。
家族の問題に簡単な答えを出したい人には、すっきりしない部分が残るかもしれません。それでも、誰かとの関係に悩んだ経験がある人や、自分の居場所について考えたい人には、読んでほしい一冊です。ボクは、読み終えてから身近な人とのつながりを少し考え直したくなりました。
参考情報
『ありか』の購入先
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